1980年代、ニューヨークのブロードウェイにあったディーン&デルーカには、麗しいオリーブオイルや食材、当時見たこともなかった様々なチーズ、美しいペストリーやサンドイッチ、お洒落で美しいたくさんのデリカッテッセンが並んでいました。ニューヨーカーや観光客が次々と吸い込まれるように店に入り、別世界の中での高揚感を味わえる場所。退屈だったアメリカのフードシーンを新たなレベルに牽引したひとつが、ディーン&デルーカだったのではないでしょうか。
そのディーン&デルーカがニューヨークから消える日が来るとは……。現在アメリカでは、新しくホノルルにオープンした店だけになったのだそうです。
日本にあるディーン&デルーカもとても素敵。アメリカ国外のディーン&デルーカはライセンスで経営されているそうです。日本のお店たちが長く続いてくれますように。
そこで、ノスタルジックな想いから、1996年に出版されたディーン&デルーカのレシピ本のご紹介です。
白いカバーに白い紙。そこに小さな黒いフォントが1ページ2コラムのレイアウトでギッチリ敷き詰められています。事典のように。写真なんて一つもありません。イラストすらない。
構成は、通常の「ブレックファースト、ランチ、ディナー、デザート」でもなく、「春夏秋冬」でもありません。食材順なのです。
- サラダ : いろいろなオイルとビネガーの解説。シンプルなグリーンサラダ、サラダニソワーズ、シーザーサラダ、タブーリ、野菜のサラダ、パスタサラダ、ポテトサラダ、アジアンサラダ。それぞれのサラダの原型であるクラッシックレシピと他のバリエーションをたっぷり紹介。
- スープ :アメリカのスープ(クラムチャウダーなど)。ヨーロッパのスープ(ミネストローネ、ガスパチョ、フレンチオニオンスープ、ロブスタービスク、フィッシュスープ)。アジアのスープ。冷たい夏のスープ。冬の温まるスープ。豆のスープ。ユダヤ系チキンスープ。
- サンドイッチ : ブリチーズとスモークハム。ローストしたトマトとズッキーニとモッツアレラ。ゴートチーズとアボカドとターキー。ケサディヤ。スクランブルエッグとイクラ。
- ピザとパスタ : ピザクラストの種類の解説。パスタの種類の解説。パスタを自分で作る方法。ソースの紹介。(トマトソースだけでもいろいろな種類があるのです)
- 野菜 : この野菜編がすごい!野菜に対する見方が変わります。野菜のひとつひとつを丁寧に紹介して、そのレシピを掲載。我々日本人には馴染みのないチリ(唐辛子)にもたくさんの種類があり違いが詳しくわかります。オリーブの実の解説も素晴らしく、読んだ後は違いを実感しながら大切に味わえるはず。
- 米・豆・穀物 : リゾット。パエリア。ライスサラダ。ワイルドライス。さまざまな豆の説明(ありがたい!)。豆料理。ファルファレ。フムス。クスクス、ファロ、ポレンタ、キノア、などなど。
- 魚介類 : 日本人は魚料理が上手ですが、違う観点から見る魚の料理の仕方も興味深いです。魚をオーブンで焼く、蒸し煮する、揚げる。オイルや野菜の使い方が上品で上手なのです。ロブスター、ムール貝、牡蠣、帆立貝についても詳しく書かれています。生ですと、セビーチェやカルパッチョなど。
- 肉類 : 鶏肉、ターキー、アヒル、ウサギ。スモールバードの鳩肉、うずら、ホロホロ鳥。白系の肉の豚肉、ハム、仔牛。赤系の肉の牛肉、ラム、鹿肉。内臓系のフォアグラや仔牛のレバー。他にもミートロフ、パテ、ソーセージ、挽肉やミートパイ。
- Condiments(調味料)とソース : ヴィネグレット、ドレッシング。インフューズドオイルしたオイル。サルサ。ホームメイドのBBQソース(各地の)。マヨネーズ(サフランマヨネーズ、ディルとレモンのマヨネーズ、アンチョビのマヨネーズ、など)。イタリアや地中海の調味料(タペナード、タラゴンタルタル、ハリサ、ペスト)、モダンフレンチソース、アジアの調味料やソース(キムチまで!)。
あまりのボリュームに使い勝手がわからなくなるかもしれません。私の使い方は、たとえば「ビーツ」を手にした時、索引でビーツについて書かれているページを探します。そこにはビーツについての解説とレシピが。「ミントとビーツのサラダ」は、ビーツを茹でて、皮を剥いてスライスし、レッドワインビネガーとレモン汁と塩胡椒で和えて、ミントを添える。シンプルで素材を活かした新鮮な味に感動を、ぜひ。
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